祖父を花見に誘いに行きました。
いそいそと和菓子を買い込み、一路祖父母宅へ。
道すがら見える薄墨のごとき桜の花が心を逸らせます。
甘いお茶も用意したよ。
今年も喜んでくれるかしら。
着くと玄関にはすっとした枝ぶりの桃が活けてありました。
灰色がかった青い花器にぽってりとした桃の花が映えます。
百花の魁と言われる梅にはどこか高潔の痩躯の隠士にした厳しさがありますが、
桃は古代の美女を思わせるような奔放な華やかさがありますね。
さて、次は桜よ。
待っとれよ!!
「おじいさん、去年行った公園に花見に行きませんか」
「寒いから出らん」
だーよーNEEEEぇぇぇ。
というわけで、コタツの上に早速和菓子を広げてモリモリ食べてもらいました。
おやつが終わりますと、私は叔母が来たらあげようと思っていた40代向けファッション誌をめくり、
祖父は「徳川三代 99の秘密」を読んでいました。
「一日僅か5ステップ!!滞るリンパを流しむくみ知らずの春顔へ」
ほぅ。
ビフォー・アフターの写真では、顔が一回り違います。
目も大きくなって、法令線も薄くなっているようです。
「おじいさん、もっと美しくなりたくありませんか」
祖父母宅では、耳の遠い祖父には大変不利なルールがあり、
一方的に言えば、返事がなくても諾とするのです。
おかげで祖父はしょっちゅう炊飯器のスイッチを押していないと祖母から責められています。
返事がなかったので、己が美を希求する心があると見做して
寝っころがって本を読むおじいさんの顔をゴリゴリ押してみました。
途中
「ぐ」
と聞こえたような気がしましたが、きっと
「虞美人のような美人になる!」
と言いたかったのでしょう。
わかる。わかるよおじいさん。アタイとおじいさんは以心伝心だもの!
一緒に美人になろうぜ!!
飽きたので(?!)止めてみるとなんということでしょう。
弾力のない92歳の肌は指の形に穴があいたまんまになっていました。
しばらくしたら戻りましたが、改めて老化というものを見た思いです。
こうやって予習しとかないと、いざ自分がなったときびっくりするからね。
おじいさんありがとう。そしてごめん。
ところでなんでそんなにされるがままなの?
次こそは暖かい一日になってもらわんと、またおじいさんに穴があく。
どうか晴れますように。
いまから趣味の園芸を見ます。OPも一緒に大声で歌わなきゃ。
そのあと草刈正雄とのファーストコンタクトです。
うぅ。心臓に悪い。