一緒に帰ろう

あさ

2009年11月01日 20:20

家庭教師先での話です。
定刻にお邪魔すると、生徒である彼がいつも玄関まで迎えに来てくれます。
お母様の躾がその字の如くしっかりと身を美しくさせているのでしょう。
思春期独特の無遠慮な警戒心こそありますが、
黙って礼をして案内してくれます。

「上質とは何か」という問いに
「静寂」
と答えたZUCCAのデザイナー小野塚秋良の言葉を思い出します。
この静かな儀礼は人にものを教えるという責任を毎回感じさせ、身が引き締まるというものです。。



が。
この日はその静寂を破ってしまいました。
どういうわけか坊主頭になっていた彼を見て、

「水嶋ー!!」


と玄関先で大声で言ってしまいました。
顔を出された奥様も大笑い。
「あー、水嶋やわ!!」とご同意くださいました。

そして奥様と二人して驚いたことに、彼は「坊主頭の水嶋」を知らなかったのです。
これが平成生まれと言うものか。


「水嶋はいい奴だ」
「水嶋は楽才がある」
「水嶋は機転が利く」
「水嶋の上司もいい人だ」
「水嶋はオレンジ色がよく似合う」

勉強前に奥様と水嶋で盛り上がりました。
ちなみに坊主にしたのはお洒落でだそうです。
おばちゃん、お洒落はわかんないけど坊主頭は好きよ。
こざっぱりしてて。男前男前。


部屋で勉強してる時もダメな先生は水嶋で頭がいっぱいです。
思わぬ水嶋日和です。

問題を解いてもらっている間
「ミズシマ イッショニカエロウ ミズシマ イッショニカエロウ」
と横で言ってたら
「先生、何それ。声おかしいし」
と言われてしまいました。






…よく聞け。
平成小僧。





鸚鵡に決まってんだろうがぁぁぁぁぁあああああああ!!





泣かすぞ?
望郷の念深くも、異国で散華した戦友たちの弔いのために
彼の地に残った水嶋の心を訥々と語って
お前を本気で泣かしにかかるぞ?!
…思い出してワタクシがべそっかきになっていますが。


そんなこんなで鸚鵡先生は

「時間があったら何が元ネタか調べて本を読んでおくように」
「おばちゃんにからかわれるのは若い者の責務であるので、甘んじて受けるように」


と言って真面目に授業に戻りました。


よくある部屋にお菓子とお茶を差し入れしてもらって
飲食しながら勉強するというスタイルを取っていません。
私は働く時間ですし、彼は勉強する時間です。
飲み食いする時間ではありません。
幸田露伴じゃありませんけど、
食べるときは食べる。働くときは働く。


それと「頭が働くように甘いものを摂る」
というのにも懐疑的です。
気分の問題じゃないかなぁと。
経験則として。


勉強後のお茶の時間に奥様と
水嶋→中井貴一→佐田啓二→小津映画の話で盛り上がりました。
こちらの奥様とも話がよく合うのですが、
読書量も大変なもので、
大西巨人の「神聖喜劇」を4回読み返したというでとんでもない方です。
この日は河井寛次郎の「火の誓い」と加藤典洋の「日本風景論」をお貸ししました。
悪くないチョイス。うふ。


「水嶋」と聞くだけで半べそですのに、
今から高杉一郎読むですよ。



水嶋…ドカベンの作者に非ず。「あぶさん」も面白いですが、「ざわさん」も最近好き。

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