クロちゃん
クロちゃん。
ワタクシにとってクロちゃんというと、
愛らしい黒い子猫でもなく、お笑い芸人でもなく、松崎しげるでもなく、
作家、黒川博行氏です。
警察小説が多い黒川氏(以下クロちゃん)ですが、
なにより面白いのはこの方のエッセイ。
麻雀してるかアリマキを捕ってるか(ペットのカエルの餌。1mmくらいの虫)
よめはん(とクロちゃんは呼ぶ)と大騒ぎしてるかという、
この3本柱のみで夕刊フジに5年以上連載をされています。
この連載は「大阪ばかぼんどーハードボイルド作家のぐうたら日記ー」という本に
纏められています。
ここのよめはんとクロちゃんは私の理想の夫婦の一組です。
ここで少し抜粋してみましょう。
ある晩家に帰ったら、よめはんが廊下に這いつくばっていた。
カエルのように腹と肘を床につけ、両手を前にそろえている。
「なんや、どないした。具合でもわるいんか」
「旅人よ、いままでなにをしてた」
「ミナミで葉巻買うて、本屋に寄った」
「旅人よ、遅うなるまで外をほっつき歩いたらあかん」
「その、旅人いうのはなんやねん」
「旅人よ、いまからなぞなぞをする。それに答えることが出来たら、ここを通してやろう」
「おまえ、ひょっとしてスフィンクスか」
「旅人よ。2.9999という職業はなんや」
「2.9999・・・・」
「旅人よ、考慮時間は5分や」
「「旅人いうのをやめんかい。ここは俺の家や。スフィンクスは大阪弁と違うやろ」
「旅人よ、生意気いうな」
「分かった、わかった。答えるがな」
さすがよめはん。
例の答えが「人間」のなぞなぞを持ってこないところがなんともこ憎い。
「降参や、答えを教えてくれ」
「旅人よ、他力本願はあかん」
「ちょっと待ちいな。他力本願の本来の意味をしってるんかい」
このあとクロちゃんは他力本願の説明をし、よめはんスフィンクスに屁理屈こねるなと怒られます。
「お願いです。ひとつヒントをください」
「その職業は女が多い」
「看護婦か・・・」
「ばかもの」
「スチュワーデスや」
「それは旅人の願望であろう」
これが50を過ぎた夫婦の会話です。
いいなぁぁぁぁ!
私も結婚したら玄関に這いつくばります。
こんなよめはんになりたいですし、こんなだんなが欲しいわ。
こういうのを真のパートナーシップというのではないでしょうか。
ここから読み取れる老巧な夫婦のあり方というのは、
・日常に非日常を演出する。
・相手の話には付き合う。
・お互いがお互いの知らないところで知識を蓄える。
でしょうか。
素晴らしいですね。
ちなみになぞなぞの答えは「保母さん」(ほぼ3)でした。
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