読んで読んで読まれて読んで(略)
・千の花になって 斉木香津著
「大分県臼杵市出身の女性の小学館文庫賞受賞作」と本屋さんに
新聞の切り抜きが張っていたので読む。こういうときだけ付き合いがいい。
太平洋戦争末期、世間と隔絶し贅沢な暮しの中絵を描く女性と出会った
内気な少女が主人公。舞台になった場所が大空襲にあった年月日を
偶々知っていたので、その日が近づくのを恐れながら読み進めていました。
オチ(オチ言うな)と謎は割と早い段階で予想がつきますが、
それはなんら欠点にならない。
・これでよろしくて? 川上弘美著
新刊。もう川上弘美は癖で読んでいます。感想はなくてもよろしくて?
・なぜ日本にキリスト教は広まらないのか 古屋安雄著
寡聞にして存じ上げない方だったので、どういうスタンスで書かれているのかしら
と疑問を持つもすぐ氷解。キリスト教の日本伝道について考えたこともない凡愚には
刺激的でしたし、知的興奮を以て読了できました。
こういう全然しらないことがテーマの本はやっぱり面白いなぁ。
そんなんだからモイカの釣り方とかヒエログリフの読み方の本を一緒に借りて
図書館のお姉さんの手を一瞬止めちゃうんだよ。
・シンプル族の反乱 三浦展著
「下流社会」という言葉を世に出した著者の新刊。今度は「シンプル族」と来たか。
でも「下流」ほどキャッチーじゃないし、何よりその対象者はそもそもこういう一回読んだら
終りの本を読まないし、商売する人も消費を好まない「シンプル族」相手に
マーケティングするのは骨が折れそうだから、より「下流」のリサーチに励むと思うし。
はじめにペラペラめくって、「これは私のことか?」と思うも精読するとどうも違うと了承。
・日々の100 松浦弥太郎著
現「暮らしの手帖」編集長の著者の身のまわりのお気に入りのものの紹介本。
男性でこういう著作を出されるようになったことに時世を感じる。
割とこういう「素敵な私生活の切り売り」は女性の専売特許と思っていたので。
学生時代宮下あきらの学帽政のマネをして、
学帽に切れ目をいれて被っていたというのを何かで読んで以来
この著者への好感度ボンとがあがりました。
私はハチマキだったり、額に「大往生」だったりだけどね。
・感じない男 森岡正博著
以前この人の「草食系男子の恋愛学」で感じた違和感をこの本で解消できました。
でももうこの人のこの切り口の本は読まないと思う。
併せて新書の立ち位置が便利になり過ぎていることに疑問を感じる。
・マノロブラニクには早すぎる 永井するみ著
女性ファッション誌の新米編集者の奮闘と、突如現れた影のある美形中学生がもたらした謎。
…盛りがいい。
・民族の発見4 江戸・都市の中の異界 内藤正敏
なんか記憶にかするお名前だなぁと思っていたら、
小松和彦さんと共著を出してらしたんですね。面白かったですけど
会社の昼休みに読んでいたら、その資料写真を同僚に見られて
ドン引きされました。
後悔はせぬ。
・ゲイ短編小説集 オスカーワイルド他著
「幸福な王子」ってオスカーワイルドやったんか!!
そしてこれがこの本に収められるんか!!
世の中知らないことに満ち満ちている。物を知らんでの。
・土を喰う日々 水上勉著
またも再読。レシピ本としても良書。ここで紹介されているような
茶色っぽい食べ物なら大概好き。
これと高橋みどりさんの「伝言レシピ」1と大庭英子さんの「しあわせ豆料理」が
私の食生活の基盤。
・滝田栄、仏像を彫る 滝田栄著
先々月だったか、遷都1300年記念のドラマに智奴役を熱演されてました。
白木の仏像を前に手をあわせ号泣する演技に私ももらい泣きしました。
滝田さんは長く仏像を彫るのをご趣味とされているらしく
その作品の写真も掲載されています。あの大柄な滝田さんと同じくらいの
不道明王は圧巻です。山田浅右衛門が昔から気になっていて、「必殺仕事人 激突!」
で氏が演じてらしたころからのファンです。ご容貌から真面目一辺倒な方かしらと
思っていましたが、かなりはっちゃけた方のようです。結構笑いを取ろうとする。
もちろん根っこは大変実直な方ですので、長くお努めになられた雪印の提供の料理番組が
社の不祥事で打ち切られたことや、昨今の世相、特に子供を取り巻く環境について
心を痛め、義憤も露わにされていました。
門外の者がいうのもおこがましいですが、虚飾に満ちた芸能界でお仕事をされるのは
お辛そうだなぁと思いながら読み進めておりました。
ここで滝田氏のすごいところを列挙したいと思います。
YOUもSAKAEにLOVEしちゃいなよ!
・美しい。年を取ってからの容貌は心の表われ。正しく澄心清意の人。
・14年つとめた「レ・ミゼラブル」の最終公演の翌日、インドに修行に行く。
・肉断ちと修行の果て、気で人の癌を癒す業を体得する。
・坐禅の会を主催している。
・すっぺらぽんで叫ぶ。
もう好きになるしかない。仏師栄。レインボーマン栄。
最後に「レ・ミゼラブル」の公演前、作者ヴィクトル・ユーゴーの墓の前での真摯な誓いと祈りの言葉を。
「縁があって、あなたが書いた「レ・ミゼラブル」のジャンバルジャンを、
日本で演じることになりました。あなたがこの小説の一行一行に込めた祈りを
私の命を使って多くの人に伝えますから、どうか見ていてください」
一度観てみたかったなぁ。
・空気の研究 山本七平著
この大御所の本をこれまで「ユダヤ人と日本人」しか読んでいませんでした。
KYという言葉を聞く度に眉をひそめている身としては、この本は良書。
「空気を読む」というのを語り出すとアタイ長いよ?うんざいなんだよ。
・しがみつかない生き方 香山リカ著
かつて何かの雑誌か本かで三砂ちずるさんの「オニババ化する社会」に
噛みついていたのが遠い昔のことのようだ(遠い目)
しかしこの人、年取らないなぁ。ここ10年くらい顔かわってない。
・資本主義はなぜ自滅したか 中谷巌著
上記の「しがみつかない生き方」、「無印ニッポン」などでも書かれていましたが、
私もちょっとこれを読んだときは絶句しました。竹中さんと言いこの人と言い
小泉政権下のあの辺の人たちは一体何だったんだろう。
同じ気分になったのが、先日和田アキ子さんが紅白歌合戦の制作側に対し、
「目玉として英国の素人スーザンボイルを呼ぶとは何事か、もっと他に話題性のある
番組作りを出来んのか」云々 と吠えておいででしたが、
選ばれる側の人間が選ぶ側に対して、随分とお門違いなことを言うなぁと驚きました。
自分たちの力不足であったと省みないで、他の者を槍玉に上げて
鬼の首を取ったようにしたり顔をしないでいただきたい。、
やはり一般以上の能力や立場にある方は、神なり有権者なりに与えられたそれを
有効に使うのを第一義としていただきたい。
持たざる者の方が多いんだから、つまらん床屋談義はこっちに任せてくれよ。
・静けさと沈黙の中で ドリス・グランバック著
極寒のメイン州で74歳の小説家は50日間あらゆる通信手段も断って
絶対的な孤独の中にその身を置きます。
我が身の内なる声にひたすら耳を傾ける日々の清らかな静けさ。
…すっごくしたい。ていうか絶対する。
こんな穏やかで豊かな時間の中でそのまま孤独死出来たら
もう死んでもいい(ん?)
この本の中で紹介されていた「ミセススティーブンは人魚の歌をきく」より
<寂しさは自己の貧困であり、孤独は自己の豊穣である>
いい言葉だ。ほんとにそう思う。
lonelinessとSolitudeは全然もの。いい本が読めた。