読んで読んで読まれて読んで
読んで読み疲れて眠るまで読んで。
・無印ニッポンー20世紀消費社会の終焉ー 堤清二・三浦展 共著
画一化(三浦氏が言うよるところのファスト風土化)に起因する日本の無印化と
メディアの平板化に警鐘を鳴らす。 皮肉が利いてる。
堤氏が男女雇用機会均等法の諮問委員会に名を連ねていた時の話と
池袋の再開発のときに何を作ればいいのか相談しに行った相手が
三島由紀夫というのが面白かった。
・日の名残り カズオ・イシグロ著
このように他の本とまとめて感想を書くのがもったいなく感じる良い小説でした。
1957年、ダーリントンホールに勤めるイギリスの老執事が一週間の休みの中、
英国国土をドライブしつつ過去を振り返るというもの。
「エマ」の頃のだいたい1世代前の話。
「エマ」同様、やはり有能な執事の名前はスティーブンスがセバスチャンであってほしい。
アメリカ人の今の主人のためにジョークを研究したり、
旅行の準備もこれ以上ない執事振りを発揮するのがクスリときます。
過去の淡い恋と仕事への矜持、年老いたからこそ知る戻れない過去の後悔は
丁寧な語り口調の中で、確かにその人生はあったのだと読者に思わせる深い感動があります。
4日目の午後に語られる、過去に彼が職務を全うすることで体現できた「品格」は
正しく仕事に努めようと日々思う人間にはこれ以上ない「光」でした。
なんか本当に光ったのよ。何かが。
ズッカー賞受賞作。 絶対お勧め。
・宮中賢所物語 高谷朝子著
昔読了済みも最近人に勧めたので再読。
皇居の奥に建つ賢所に57年祈りと清めの日々を勤め上げた女性の手記。
ちなみに今は2年交代制。宮中の自然の描写が美しい。
・ゲイマネーが英国経済を救う 入江敦彦著
以前何かでちらと聞いたピンクポンドの実態がここに。ここまで大きな市場だったとは。
ゲイがなぜ経済を促進するかわかりやすく解説。
真逆の私がその説にぴたりと嵌るので納得。
この人の京都ものよりイギリスものの著作の方が断然面白くて好き。
「女王陛下のお気に入り」は寝る寸前のベッドの中で眺めるのにぴったり。
・センセイの鞄1 川上弘美原作 谷口ジロー作画
漫画アクションにて連載中。1巻では花見で小島孝(思ったより若い)とチューするところまで。
巨匠の画力に圧倒。ほぼ原作通りで1話につき1ページほどオリジナルが入っています。
巨匠の漫画が血肉になっている私は、カツサンドを食べるときはちゃんと
「孤独のグルメ」のゴローちゃんを踏襲して死んだ魚のような目をして食べます。
・崩壊する社会 繁栄する日本 三橋貴明著
参考資料の表多し。ここにこれがあると覚えておくだけで後で何かの役に立ちそう。
読後感は梅田望夫の「ウェブ進化論」に似た「まぁなんとかなりそうだなぁ」という
寄る辺ないけれどその日穏やかに眠るにはいい感じのもの。
今後もこの人の著作は読んどくか。
ちなみに梅田望夫は梅田晴夫の息子で梅田みかの兄。
・ある華族の昭和史 酒井美意子著
前田侯爵家に生まれ酒井公爵家に嫁いだ著者の半生。訥々と語られる華やかな貴族文化よりも
昭和20年1月の京都、小室にある近衛公の別荘での密談の下りが印象的でした。
昭和55年に新聞でこの秘話を公開されたから書けるという前書きの後、
岡田啓介と米内光政、仁和寺のご門跡の4人が集まり、戦争に負けても皇室の安泰を図るため
先例にならって天皇を仁和寺にお迎えし、落飾を願い法皇になられた陛下をお守りする。
そして皇太子に譲位し高松宮を摂政にするというのが近衛文麿の構想だったそうです。
この密談後も近衛邸に高松宮や著者を迎えて話をしています。
近衛文麿は女性と話すときは女言葉を使っていたそうです。
もう私の中では文麿=岸部一徳がこれですっかり固まってしまいました。
一徳ボイスには女言葉がよく似合う。
また戦後に著者が進駐軍の援助のもと、クラブを作って大成功する下りもドラマチックです。
その名を「クラブ フェニックス」著者このとき若干20歳。
ちなみに昭和57年発行のこの本は今や絶版、私も大分県立図書館で借りましたが、
P229~236が切り取られていました。よくない。
・ウォールデン 森の生活 ヘンリー・D・ソロー著 今泉吉晴訳
27歳でニューイングランドの森に移り住んだ著者の生活記。
知の巨人の静かな思索と労働と自然観察の日々の書は間違いなくベストセラーに相応しい。
10数年前に別の訳で読んだのですが、この訳書の方がずっとずっと読みやすくて嬉しい。
もう日本語訳でこれ以上のものは出ないんじゃないかな。手元に置いておきたい一冊。
・深夜食堂5 安部夜郎
「早めし」の回の林六段が呉智英にしか見えない。
「アジの開き」のローズ美千代さんがかっこよかった。
目指す老女としてド―ラもいいけどローズもいいなぁ。
・松本大本営 歴史の証言 青木孝寿著
ごめーん。
まだ読み途中。 松本大本営って気になるよね。