銀座の怪人

あさ

2009年05月24日 22:26

七尾和晃著 「銀座の怪人」 読了。

一気読みしました。この興奮、誰に伝えていいのかわからん。
読み終わったあと夢に出たぐらいですよ。
作りが簡単な脳だなぁ。

2004年、FBIが逮捕したユダヤ系イラン人の男によって、日本全体の美術資産に対する
信頼の基盤が根底から揺るがされかねない、戦慄の状況が詳らかになりました。

男は過去20年以上にわたり、日本全土に絵画、骨董の贋作を売り捌いていたのです。
バブル期において画商、美術史教授、実業家、政治家、男の持つ美術品を買った人間は数知れず、
今もその被害額は杳として知れません。
なにより彼等は単純に被害者と言えるのか・・・。

「ニセモノを掴まされて恥ずかしい」
日本人の「恥」の感性をも利用したところに男の怪人振りが伺えます。

政商の側面もある銀座の画商達の老獪さ、バブル期の狂乱、三越事件etc
本を読む楽しみは「知らないことを知ること」と「知っていることが繋がること」ですね。

三越事件で名前の上がった男が、先日読んだ「三島由紀夫・剣と寒紅」に出てきた人かと
一瞬思って慌てました。でも年齢が全然違うので
「あさちゃんはうっかりちゃんねぇ」なんて言いながら読みました。

題材もすごいですが、著者が何よりすごい。
その筆力、取材力、人脈、74年生まれというのが俄かには信じ難い程です。

著者が当事者達に取材する度に感じた既知感。
それはエピローグで明かされます。
これも上手い。唸りました。

勢い彼の著作5冊全部読み事に決定。
1冊だけ入手が難しそうですが、何とかなるでしょう。
この本と、「堤義明 闇の帝国」はすでに読了(これも取材力と執念に圧倒されました)
次は「炭鉱太郎が来た道」です。
特に「炭鉱~」は良書であると私の中の野性の勘が叫んでいます。
楽ちみ。


だが敢えて言いましょう。惚れたから言う。
七尾さん、貴方は確かに若い。
おそらく貴方の知己である方々は8割以上かなり年長者でしょう。
若い、若いと言われてらっしゃる事でしょう。
戦後活躍したフィクサー、財界人、大物と対峙する貴方は眩しい。
そして年長者には貴方の若さと、それに不釣合いなほどの能力が眩しいはずです。
それはご自身でわかってらっしゃるのでしょう、
そしてご自身の若さを強みにしてらっしゃる。

ですが、ですがです。
取材されるときはともかく、
著作の中でもそれを露にされるのはお控えになられた方がよろしいのではないでしょうか。
綿密な取材を地とするなら、細い流水紋のように織り込まれる
若さを強調しているかのような不釣合いな青い文。

貴方より年少である私でさえちょっと恥ずかしくなるほどです。
これからますますのご活躍は目に浮かびますが、
同時に貴方が年経て、過去の著作の所々の青さに身悶えするのも浮かびます。
聡明な貴方です、お気づきにならないはずはございません。

お忙しい御身、このような駄文をご覧になる時間はないでしょうが、
一瞬恋かと勘違いした程の熱情で以て、著作を拝読した者の戯言と御一笑くださいませ。

ごきげんよう。








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