山本信太郎 著 「東京アンダーナイト」 読了。
かつて赤坂でその栄華を誇った、ナイトクラブ「ニューラテンクォーター」の支配人でらした
氏の自伝的「夜の昭和史」です。
例によって物を知らん私ですが、
この「ニューラテンクォーター」は力道山が刺された現場だったそうですね。
著者はほぼ唯一の目撃者でしたが、
当時は一切黙して語らず、この本で初めて仔細を詳らかにしています。
第一章はこの力道山刺殺事件の真相ですが、
以下も昭和のビックネームがページを踊ります。
宮家から財界、芸能人に侠客までおよそ当時の名士、有名人は皆この店を訪れたのでしょう。
書けない事も多かったでしょうが、それでも昭和の語り部として
生々しい程の内容を著した氏の決断と筆に驚いています。
語られない戦後史に興味のある人間には、すこぶるつきの面白い一冊です。
この著者のすごいところ。
児玉機関や、横井英樹といったどこか後ろ暗い名前も出てきますが、
この方の語り口とお人柄故か、ダーティーな感じをまるで受けないのです。
やはり何かの世界で頂点を極めた方は人格者でもあるのですね。
卵が先か~の話かもしれませんが、
私が一保堂の「天下一」を飲むのには、やはり道は険しいようです。
個人的に驚いたのは、聞き覚えのあり過ぎる建設会社の名前が出てきたのと、
上津江にゴルフ場を作っていたということでしょうか。
それとおかしかったのが、お街の人が借金作って潜伏する先は大分なのかと。
以前も何かの事件で
「これだけ人里から離れていれば、バレないと思った」と
遺体を大分の県南に捨てようとした犯罪者がいましたが、
…普通にこちとら住んでるっての!!
ここらはこれで十分人里だっての!!
やーねぇ、もう。
最終章ではお互いを「兄弟」と呼ぶ、勝新太郎との交遊が書かれています。
勝新太郎は「帝都物語」の渋沢翁しかしらないのですが、忘れきれない話が一つ。
アーサー・ゴールデンの「さゆり」で芸者や祇園文化の情報提供者(後に訴訟を起こし、勝訴)
岩崎究香(峰子)さんの著作、「岩崎峰子の花いくさ」で、副題「ほんまの恋はいっぺんどす」の相手が
「若くして長唄のお師匠、眉目は整い、一途で繊細な男性」
みたいな書きようで、読みながら
「(素行はアレだが)どんな貴公子然とした方なのかしら!トキメキトキメキ!」
なーんて思い後半ページを繰ったら、よう肥えた勝新と著者とのツーショット。
どんだけびっくりしたことか。
「なんやとー!!」ベッドで横になったまま叫ぶワタクシ。
きっつい寝酒でしたわ。
昭和の怪優とも呼ばれた勝新太郎。
私にはわかりませんが、男性も女性も魅了させる力が勝新にはあったのでしょう。
わからないから知りたい。
読書と人生の燃料としてはこれで十分です。
さゆり…「川端康成の文章を英語にして、さらにそれを和訳したような文章にした!」
すごいな!
アメリカ人から見ると、川端文学は相当倒置法が多いようです。
しかしニューヨークタイムズの係累の人なら、そりゃ10年かけて本書けるわなぁ。
花いくさ…自己プロデュースにえらく長けた方だなぁ…くらいしか感想がなくてごめんなさい。
あと守秘義務について考えさせられました。
帝都物語…これのおかげでTVで顔の長い人を見ると「加藤ぉぉぉぉぉぉ!!」と叫んでしまうようになった。大変悪い癖。