闇市の帝王
七尾和晃氏著 「闇市の帝王ー王長徳と封印された「戦後」-」 読了
ー戦勝国民としての特権を武器にした男は、異郷の地日本で
「東京租界の帝王」と呼ばれるまでにのし上がっていくー
ー彼は何を目指したのか、日本は彼をどのように受け入れたのか、
遠き「戦後」の知られざるアンダーワールドを跋扈した男の
回想を交えた物語ー
物語は安倍晋三が自民党幹事長に就任した秋(!)、
著者が居酒屋の席で見た総理大臣宛ての内容証明郵便と
ある男の名刺を見たことから始まります。
「黄色合同株式会社 代表取締役 王長徳」
彼がいかに「封印された」戦後を体現した人間か。
この本にも出てきますが、「M資金」「五島慶太」「G2」「安藤昇」他
少し本を読めばいくらでも出てきます。
私が寡聞にして知らないだけだったのかもしれませんが、
当の「王長徳」の名前をここで始めて知りました。
彼の元を訪れた著者は、一人の男が背負った「戦後」に耳を傾けます。
語られざる物語は、決して断絶した遠い昔ではなく、平成の今に繋がるものでした。
彼の言葉、彼の人となりの全てが書かれた本ではありません。
闇市を作り、戦後の混乱期に暗躍した彼は決して清らかな人生を送ったわけではなく、
著者自身どこまで活字にするか悩まれたことと思います。
ですが、清濁併せ持ってこそ人間。
だからこそ著者は彼に惹かれたのでしょう。
それは我々読者も、著者の筆をかすがいに追体験できます。
最新作、「炭鉱太郎が来た道」の道程を示す著作の一つです。
新たな読書体験の予感は、単調な生活の中で最高の愉悦ですね。
ちょっと息切れ。
4冊一気はやっぱり時間がかかるのかしら。
ちゅーか「朗読者」読みながらってのを止めろ。
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