2009年06月13日

総理の乳母

七尾和晃氏著 「総理の乳母ー安倍晋三の隠された原風景」 読了

山口の小さな村で出会った一人の老女。
彼女は当時政治記者達から岩戸に隠されたかのように、その姿を晦ましました。
彼女はなぜ「行方不明」とされていたのか・・・。
すべては著者が彼女と出会った2003年9月、
49歳の若さで自民党幹事長となった男の存在にありました。

ー彼女の名は久保ウメ。安倍晋三の乳母だった女性(ひと)-


安倍晋三が最初に世間の耳目を集めたのは、やはり小泉元首相の電撃的な訪朝の際の発言、
「もし拉致を認めないで謝罪をしないなら、席を立って帰りましょう」
その後安倍晋三のタカ派のイメージは定着しましたね。
この発言に対する著者の違和感、恐怖感は当時ニュースを見ていた私も感じていたのを思い出しました。

あれから7年。
かわったことは首相の首。
かわらなかったのは拉致問題の抜本的解決が見られない後手後手の外交。
我々は何をしてきたのでしょうか。

挙句今日のニュースのトップは、北朝鮮のウラン濃縮着手の表明。
さらにすべてのプルトニウムの兵器化を言明。(いや、これはさすがに脅しという名の外交カードでしょうが)
・・・いけね、泣けてきた。


「総理の乳母」では安倍家を軸として、戦後からこれまでの政治の季節を縦糸に、
80余年を生きたウメとの遣り取りと彼女の人生を横糸として、246ページを織り上げています。
さらに(・・・ごめんなさい。先に謝ったら許してくださる?)
その織布に錦糸で綾なしたかのような、著者のリリカルなまでの感性!出ましたよ!
詩人?乙女?どうしたの?!
怜悧なまでの聡明さが伺えるからこそ、余計に目立つこの危うげな程の弱さと若さの露呈。
そんなに弱さを見せなくても、私を始めみんなあなたのことが好きだから!!大丈夫だから!!

たぶんコメントを頂いていなくてもこれは書いていました。それくらい気になるのです。
いらん世話ですが。
芸人でいうとチュートリアルの福ちゃんも同じくらい心配です。
やはりいらん世話ですが。


この剃刀陸奥もかくやというような明晰ぶりと、叙情的に過ぎるほどの精神のかよわさ。
軸足をどこに置いて読んだらいいのか分らないこの感じはアレです。
「カンゴロンゴ」ですね。
NHKの日曜の夜、今のサラリーマンNEOと同じ時間にあったものです。
この番組のギャグとシリアスの匙加減の狂いっぷりは相当なものでした。
心配しながら見ておりましたが、後半になってようやくわざとだというのがわかりました。

ということは氏の危うさもわざとの可能性もあり?!
もしかしてやられた?!
文学的作為ってやつ?!
私の中にようやく気づきが走ったのです。
これが書き物の天賦の才があるということでしょう。
このあたりは頂戴したコメントに書いてらっしゃいましたが、おそらく大いなる謙遜。
著者の力量の底知れなさを思うに到る読書の時間でした。


追記・・・本、雑誌を手に取ると、出版社と表紙の紙質を確認してしまう下品な癖があります。
     出版に際し、ご苦労なさったのですね・・・。


カンゴロンゴ・・・不評だったかあっさり終了。平幹次郎演じるカンゴローは見た目のわりに
          打たれ弱い方で、なかなかに母性本能をくすぐる恐ろしい御仁。
          「お言葉発射!」の際の図画工作はピタゴラスイッチのスタッフによるものか?
          「♪30過ぎても寝てばかりぃ 40になっても惑いっぱなしぃ」というOPは
          今でも口を伝ってしまいます。



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Posted by あさ at 22:04│Comments(2)
この記事へのコメント
現在50代前半の安倍さんに乳母さん、ってところでまず驚きます。
そして
>山口の小さな村で出会った一人の老女。
彼女は当時政治記者達から岩戸に隠されたかのように、その姿を晦ましました。
彼女はなぜ「行方不明」とされていたのか・・・。
すべては著者が彼女と出会った2003年9月、
49歳の若さで自民党幹事長となった男の存在にありました。

とあると、なんでなんで、知りたい。という気持ちになります。
その上に、

>その織布に錦糸で綾なしたかのような、著者のリリカルなまでの感性!出ましたよ!

ますます、知りたい、読みたい気持ちが膨らみます。
Posted by かじ at 2009年06月13日 23:00
かじ様

>ますます、知りたい、読みたい気持ちが膨らみます。


事件物なのに、野次馬的な興味超えた関心を以て
氏の本は読めます。
人にお優しいかじ様の感性に響くものかと思われます。
Posted by あさあさ at 2009年06月14日 01:44
 
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