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2011年01月04日

たった独りの引き揚げ隊

「たった独りの引き揚げ隊 -10歳の少年、満州1000キロを征く- 」 石村博子 読了


去年一番人に勧めた本です。

サンボの生ける神と言われるビクトル古賀さんの満洲からの引き揚げの体験談。
サンボというのはロシアの格闘技で、その成り立ちにはあの広瀬武夫の影響もあったと言われています。
ビクトル氏は41戦すべて一本勝ちという偉業と成し遂げ
ソ連からは数多の賞を授与し、その名は遠く旧東欧圏まで響き渡り、
後進も多く育ててらっしゃいます。

ですが彼は自分の人生で輝いていたのは10歳、11歳の頃だと言います。






日露ハーフのビーチャ(ビクトル君の愛称。これがあるからロシア文学は辛い)は
コサック最後の子どもとして祖父からコサックの教育を受けます。

世界最強と言われたコサック近衛騎兵の一族の長である祖父からの薫陶と自然、
そして丈夫な体と信仰心が彼を満洲から日本まで導いてくれたました。

時に日本人から露助の子どもと言われ、引き揚げ隊から爪弾きにされても
途中途中に横たわる死体に十字を切り、虫が湧くのを少しでも遅らせるようにうつぶせに寝かしてやり
その遺体から靴を拝借して、太陽の位置を頼りに一人ひたすら道を進みます。




ざっくり書くと10歳の男の子の身に降りかかるには
あまりに酷な運命で胸が潰されそうですが、
これは読むと印象がまるで違うんですよ。
ビーチャの命の力の強さが暗さを一掃します。
ビクトル氏の語り口も軽やかで悲壮感がなく冒険譚のようです。

ばてると落ち込み、落ち込むと生命力が弱る事を分かっているビーチャは
たくさんのロシアの歌を歌いながら陽気に荒野を歩きます。

本の中で紹介されているコサックの子守歌は後にアメリカのフォークシンガー、ピート・シーガーが
「花はどこへ行った」のタイトルで歌い、世界中に広まったそうです。



水場を探し、野宿の際は天候と急激な温度差に気をつけ、馬糞や草で虫を除け
一路日本を目指すビーチャに空腹で苦しんだ記憶はありません。

「流れる星は生きている」をはじめ、引き揚げに関する本の中で
これほど特異なことがあるでしょうか。
そのうち調達できるはずという自信と気楽さをビーチャは持っていました。
食べ物を自分で調達できる人間というのは本当に頼もしい。


ビーチャの冒険もですが、コサックの歴史とその終焉を知るのにおいても良書と言えます。

私に子どもが出来たらこの本を読ませてあげたいなぁ。
で、もうちょっと大きくなったら「銃・病原菌・鉄」を渡しとくか。
あれ?まるで予定はないのに想像したらえらい楽しいじゃなイカ!!
(そのうちゲソゲソ言い出すんだわ、私の子どもなら…)


何回読み返したかわかりませんが、読むたびに腹筋の回数が増えます。
今夜も寝る前にざっと読むか。

私も「太陽が一個、ナイフが一本。それさえあれば、生きて、歩ける」と言えるぐらいの
身体と心と知識を持てるように生きていきたいです。

あと、生きていくのにやはりそう物はいらんな!!と
…いかん。またビョーキが。







只今のBGMは Led Zeppelin の「移民の歌」
あ、今マイケル・ナイマンの「ピアノレッスン」になった。
今年のニューイヤーオペラコンサートは最初の方逃したのでパスしちゃった。
年末の第九は聴けたからよしとするか。  


Posted by あさ at 00:08Comments(2)

2009年12月31日

近代麻雀

09年 最後の近代麻雀が出ています。
これと芸術新潮にはほんとにハズレがないなぁ。
今号も大笑いしました。


・アカギ
 アカギの血を1800CC抜いて鷲巣様大喜び。
 「些少…!このツモのスペシャルボーナスも 圧倒的に些少…!!」

 
・ワシズ
 鷲巣様、大きな亀の上で弥勒菩薩になってた。
 ピカーッて光ってた。ピカーッて。


・ムダヅモ
 教皇聖下が見開きで美しすぎる字一色(と書いてロゴスと読む)をヒトラーにぶち込むも
 ヒトラーが覚醒し、金髪逆立つスーパーアーリア人になる。
 もうなにがなんだか。



ムダヅモの3巻も出ていました。
・テキサスの荒鷲パパ・ブッシュがブッシュJrを庇って死ぬ(?)シーンで不覚にも泣く。
・パウエルさんみたいな有能な忠臣に憧れる。
・ひとコマだけ出たゲーリングの肥え方が足りん。




同じようにムダヅモを買っている知人から

「ムダヅモのアニメDVD買わないの?」と聞かれたので、
「本人が声充てるなら買う」と答えておきました。
タイゾー議員あたり暇なら出れるんじゃないのかなぁ。
  


Posted by あさ at 16:39Comments(2)

2009年12月31日

書に溺れる

読んで読んで読まれて読んで(略)


・千の花になって  斉木香津著

 「大分県臼杵市出身の女性の小学館文庫賞受賞作」と本屋さんに
 新聞の切り抜きが張っていたので読む。こういうときだけ付き合いがいい。
 太平洋戦争末期、世間と隔絶し贅沢な暮しの中絵を描く女性と出会った
 内気な少女が主人公。舞台になった場所が大空襲にあった年月日を
 偶々知っていたので、その日が近づくのを恐れながら読み進めていました。
 オチ(オチ言うな)と謎は割と早い段階で予想がつきますが、
 それはなんら欠点にならない。



・これでよろしくて?  川上弘美著

 新刊。もう川上弘美は癖で読んでいます。感想はなくてもよろしくて?



・なぜ日本にキリスト教は広まらないのか 古屋安雄著

 寡聞にして存じ上げない方だったので、どういうスタンスで書かれているのかしら
 と疑問を持つもすぐ氷解。キリスト教の日本伝道について考えたこともない凡愚には
 刺激的でしたし、知的興奮を以て読了できました。
 こういう全然しらないことがテーマの本はやっぱり面白いなぁ。
 そんなんだからモイカの釣り方とかヒエログリフの読み方の本を一緒に借りて
 図書館のお姉さんの手を一瞬止めちゃうんだよ。



・シンプル族の反乱  三浦展著

 「下流社会」という言葉を世に出した著者の新刊。今度は「シンプル族」と来たか。
 でも「下流」ほどキャッチーじゃないし、何よりその対象者はそもそもこういう一回読んだら
 終りの本を読まないし、商売する人も消費を好まない「シンプル族」相手に
 マーケティングするのは骨が折れそうだから、より「下流」のリサーチに励むと思うし。
 はじめにペラペラめくって、「これは私のことか?」と思うも精読するとどうも違うと了承。



・日々の100 松浦弥太郎著

 現「暮らしの手帖」編集長の著者の身のまわりのお気に入りのものの紹介本。
 男性でこういう著作を出されるようになったことに時世を感じる。
 割とこういう「素敵な私生活の切り売り」は女性の専売特許と思っていたので。
 学生時代宮下あきらの学帽政のマネをして、
 学帽に切れ目をいれて被っていたというのを何かで読んで以来
 この著者への好感度ボンとがあがりました。
 私はハチマキだったり、額に「大往生」だったりだけどね。



・感じない男 森岡正博著

 以前この人の「草食系男子の恋愛学」で感じた違和感をこの本で解消できました。
 でももうこの人のこの切り口の本は読まないと思う。
 併せて新書の立ち位置が便利になり過ぎていることに疑問を感じる。
 


・マノロブラニクには早すぎる  永井するみ著

 女性ファッション誌の新米編集者の奮闘と、突如現れた影のある美形中学生がもたらした謎。
 …盛りがいい。




・民族の発見4 江戸・都市の中の異界 内藤正敏  

 なんか記憶にかするお名前だなぁと思っていたら、
 小松和彦さんと共著を出してらしたんですね。面白かったですけど
 会社の昼休みに読んでいたら、その資料写真を同僚に見られて
 ドン引きされました。
 後悔はせぬ。



・ゲイ短編小説集 オスカーワイルド他著

 「幸福な王子」ってオスカーワイルドやったんか!!
 そしてこれがこの本に収められるんか!!
 世の中知らないことに満ち満ちている。物を知らんでの。



・土を喰う日々 水上勉著
 
 またも再読。レシピ本としても良書。ここで紹介されているような
 茶色っぽい食べ物なら大概好き。
 これと高橋みどりさんの「伝言レシピ」1と大庭英子さんの「しあわせ豆料理」が
 私の食生活の基盤。



・滝田栄、仏像を彫る  滝田栄著

 先々月だったか、遷都1300年記念のドラマに智奴役を熱演されてました。
 白木の仏像を前に手をあわせ号泣する演技に私ももらい泣きしました。
 滝田さんは長く仏像を彫るのをご趣味とされているらしく
 その作品の写真も掲載されています。あの大柄な滝田さんと同じくらいの
 不道明王は圧巻です。山田浅右衛門が昔から気になっていて、「必殺仕事人 激突!」
 で氏が演じてらしたころからのファンです。ご容貌から真面目一辺倒な方かしらと
 思っていましたが、かなりはっちゃけた方のようです。結構笑いを取ろうとする。
 もちろん根っこは大変実直な方ですので、長くお努めになられた雪印の提供の料理番組が
 社の不祥事で打ち切られたことや、昨今の世相、特に子供を取り巻く環境について
 心を痛め、義憤も露わにされていました。
 門外の者がいうのもおこがましいですが、虚飾に満ちた芸能界でお仕事をされるのは
 お辛そうだなぁと思いながら読み進めておりました。

 ここで滝田氏のすごいところを列挙したいと思います。
 YOUもSAKAEにLOVEしちゃいなよ!

 ・美しい。年を取ってからの容貌は心の表われ。正しく澄心清意の人。
 ・14年つとめた「レ・ミゼラブル」の最終公演の翌日、インドに修行に行く。
 ・肉断ちと修行の果て、気で人の癌を癒す業を体得する。
 ・坐禅の会を主催している。
 ・すっぺらぽんで叫ぶ。
 

 もう好きになるしかない。仏師栄。レインボーマン栄。
 最後に「レ・ミゼラブル」の公演前、作者ヴィクトル・ユーゴーの墓の前での真摯な誓いと祈りの言葉を。
 
 「縁があって、あなたが書いた「レ・ミゼラブル」のジャンバルジャンを、
  日本で演じることになりました。あなたがこの小説の一行一行に込めた祈りを
  私の命を使って多くの人に伝えますから、どうか見ていてください」


 一度観てみたかったなぁ。



・空気の研究 山本七平著
 
 この大御所の本をこれまで「ユダヤ人と日本人」しか読んでいませんでした。
 KYという言葉を聞く度に眉をひそめている身としては、この本は良書。
 「空気を読む」というのを語り出すとアタイ長いよ?うんざいなんだよ。



・しがみつかない生き方  香山リカ著

 かつて何かの雑誌か本かで三砂ちずるさんの「オニババ化する社会」に
 噛みついていたのが遠い昔のことのようだ(遠い目)
 しかしこの人、年取らないなぁ。ここ10年くらい顔かわってない。



・資本主義はなぜ自滅したか  中谷巌著

 上記の「しがみつかない生き方」、「無印ニッポン」などでも書かれていましたが、
 私もちょっとこれを読んだときは絶句しました。竹中さんと言いこの人と言い
 小泉政権下のあの辺の人たちは一体何だったんだろう。
 同じ気分になったのが、先日和田アキ子さんが紅白歌合戦の制作側に対し、
 「目玉として英国の素人スーザンボイルを呼ぶとは何事か、もっと他に話題性のある
 番組作りを出来んのか」云々 と吠えておいででしたが、
 選ばれる側の人間が選ぶ側に対して、随分とお門違いなことを言うなぁと驚きました。
 自分たちの力不足であったと省みないで、他の者を槍玉に上げて
 鬼の首を取ったようにしたり顔をしないでいただきたい。、
 やはり一般以上の能力や立場にある方は、神なり有権者なりに与えられたそれを
 有効に使うのを第一義としていただきたい。
 持たざる者の方が多いんだから、つまらん床屋談義はこっちに任せてくれよ。



・静けさと沈黙の中で  ドリス・グランバック著

 極寒のメイン州で74歳の小説家は50日間あらゆる通信手段も断って
 絶対的な孤独の中にその身を置きます。
 我が身の内なる声にひたすら耳を傾ける日々の清らかな静けさ。
 …すっごくしたい。ていうか絶対する。
 こんな穏やかで豊かな時間の中でそのまま孤独死出来たら
 もう死んでもいい(ん?)
 この本の中で紹介されていた「ミセススティーブンは人魚の歌をきく」より
 <寂しさは自己の貧困であり、孤独は自己の豊穣である>
 いい言葉だ。ほんとにそう思う。
 lonelinessとSolitudeは全然もの。いい本が読めた。

  


Posted by あさ at 15:20Comments(2)

2009年12月31日

書に淫する


読んで読んで読まれて読んで
読んで読み疲れて眠るまで読んで。


・無印ニッポンー20世紀消費社会の終焉ー 堤清二・三浦展 共著
 
 画一化(三浦氏が言うよるところのファスト風土化)に起因する日本の無印化と
 メディアの平板化に警鐘を鳴らす。 皮肉が利いてる。
 堤氏が男女雇用機会均等法の諮問委員会に名を連ねていた時の話と
 池袋の再開発のときに何を作ればいいのか相談しに行った相手が
 三島由紀夫というのが面白かった。



・日の名残り カズオ・イシグロ著
 
 このように他の本とまとめて感想を書くのがもったいなく感じる良い小説でした。
 1957年、ダーリントンホールに勤めるイギリスの老執事が一週間の休みの中、
 英国国土をドライブしつつ過去を振り返るというもの。
「エマ」の頃のだいたい1世代前の話。
 「エマ」同様、やはり有能な執事の名前はスティーブンスがセバスチャンであってほしい。
アメリカ人の今の主人のためにジョークを研究したり、 
 旅行の準備もこれ以上ない執事振りを発揮するのがクスリときます。
 過去の淡い恋と仕事への矜持、年老いたからこそ知る戻れない過去の後悔は
 丁寧な語り口調の中で、確かにその人生はあったのだと読者に思わせる深い感動があります。
 4日目の午後に語られる、過去に彼が職務を全うすることで体現できた「品格」は
 正しく仕事に努めようと日々思う人間にはこれ以上ない「光」でした。
 なんか本当に光ったのよ。何かが。
 ズッカー賞受賞作。 絶対お勧め。
  


・宮中賢所物語 高谷朝子著
 
 昔読了済みも最近人に勧めたので再読。
 皇居の奥に建つ賢所に57年祈りと清めの日々を勤め上げた女性の手記。
 ちなみに今は2年交代制。宮中の自然の描写が美しい。



・ゲイマネーが英国経済を救う 入江敦彦著

 以前何かでちらと聞いたピンクポンドの実態がここに。ここまで大きな市場だったとは。
 ゲイがなぜ経済を促進するかわかりやすく解説。
 真逆の私がその説にぴたりと嵌るので納得。
 この人の京都ものよりイギリスものの著作の方が断然面白くて好き。
 「女王陛下のお気に入り」は寝る寸前のベッドの中で眺めるのにぴったり。

 

・センセイの鞄1 川上弘美原作 谷口ジロー作画
 
 漫画アクションにて連載中。1巻では花見で小島孝(思ったより若い)とチューするところまで。
 巨匠の画力に圧倒。ほぼ原作通りで1話につき1ページほどオリジナルが入っています。
 巨匠の漫画が血肉になっている私は、カツサンドを食べるときはちゃんと
 「孤独のグルメ」のゴローちゃんを踏襲して死んだ魚のような目をして食べます。



・崩壊する社会 繁栄する日本 三橋貴明著

 参考資料の表多し。ここにこれがあると覚えておくだけで後で何かの役に立ちそう。
 読後感は梅田望夫の「ウェブ進化論」に似た「まぁなんとかなりそうだなぁ」という
 寄る辺ないけれどその日穏やかに眠るにはいい感じのもの。
 今後もこの人の著作は読んどくか。
 ちなみに梅田望夫は梅田晴夫の息子で梅田みかの兄。


・ある華族の昭和史 酒井美意子著

 前田侯爵家に生まれ酒井公爵家に嫁いだ著者の半生。訥々と語られる華やかな貴族文化よりも
 昭和20年1月の京都、小室にある近衛公の別荘での密談の下りが印象的でした。
 昭和55年に新聞でこの秘話を公開されたから書けるという前書きの後、
 岡田啓介と米内光政、仁和寺のご門跡の4人が集まり、戦争に負けても皇室の安泰を図るため
 先例にならって天皇を仁和寺にお迎えし、落飾を願い法皇になられた陛下をお守りする。
 そして皇太子に譲位し高松宮を摂政にするというのが近衛文麿の構想だったそうです。
 この密談後も近衛邸に高松宮や著者を迎えて話をしています。
 近衛文麿は女性と話すときは女言葉を使っていたそうです。
 もう私の中では文麿=岸部一徳がこれですっかり固まってしまいました。
 一徳ボイスには女言葉がよく似合う。
 また戦後に著者が進駐軍の援助のもと、クラブを作って大成功する下りもドラマチックです。
 その名を「クラブ フェニックス」著者このとき若干20歳。
 ちなみに昭和57年発行のこの本は今や絶版、私も大分県立図書館で借りましたが、
 P229~236が切り取られていました。よくない。


・ウォールデン 森の生活 ヘンリー・D・ソロー著 今泉吉晴訳

 27歳でニューイングランドの森に移り住んだ著者の生活記。
 知の巨人の静かな思索と労働と自然観察の日々の書は間違いなくベストセラーに相応しい。
 10数年前に別の訳で読んだのですが、この訳書の方がずっとずっと読みやすくて嬉しい。
 もう日本語訳でこれ以上のものは出ないんじゃないかな。手元に置いておきたい一冊。


・深夜食堂5 安部夜郎

 「早めし」の回の林六段が呉智英にしか見えない。
 「アジの開き」のローズ美千代さんがかっこよかった。
 目指す老女としてド―ラもいいけどローズもいいなぁ。


・松本大本営 歴史の証言  青木孝寿著

 ごめーん。
 まだ読み途中。 松本大本営って気になるよね。

  


Posted by あさ at 14:57Comments(4)

2009年09月06日

深夜食堂 4巻

深夜食堂 4巻 読了。

表紙のテーマカラーは紫です。
赤、青、黄、と来たので次は鶯色(緑)かなと思っていたのですが、
「秋なす」の話もあった、この4巻。
いざ表紙を見れば確かにこれ以外にあるまいというような
秋の茄子のきれいな紫でした。

「深夜食堂」の魅力はその料理、人間模様、様々ですが
「読者が食堂にいるかのような演出」も挙げられると思います。

そのひとつに、合間合間にマスターがこちらを見て話すコマがあります。
そのときの話とは別の時間軸で語られることもあり、
まるで私達が夜中ふらりと「めしや」に寄って
そのときどきの食べたいものをつまみながら、その話を聞いているようです。

このマスターが読者に向かって話す台詞は、フキダシでもその外でも
マンガの中の客との台詞とフォントが違います。ちょっと細い。
この細かさもいいんですよね。

この辺をどのようにドラマに反映させるのかしらと、
見れるかどうかもわからないのにつらつらと考えてしまいます。
未練がましいことよ。


さらに「深夜食堂」の魅力を語るなら、その「夜っぽさ」もありますね。
夜の街独特の猥雑さ、静かさ。
ただ正しいだけの太陽の下だけでは見えない人の営み。
ほの明るい街のネオンのように灯る人情。


一巻の「たらこ」の回のマリリンの紹介でマスターが言った、

「何でも惚れた男の真似をしたがる  かわいい女なのさ」

うろおぼえですがこの台詞、昼間だけの浅い生き物(私です)には
なかなかでないものです。

正しい、正しくないの話ではなく
あの街ならこの台詞は確かに似合うなぁと。


今回の4巻ではさらなる楽しみ方を発見しました。



『客の顔のモデルを当てる』

一人だけわかったのが、「やっこ」の回の彼。
滝沢秀明ですよね。そっくり。

他にも「絶対この顔みたことあるわ!」って客がいるのですが、
どーーにもわからない。
「きんぴら」の市川先生と「冬至のカボチャ」のサンちゃんが
TVでみたことあるような気がしてならないのです。
私がわからんということは、民放で活躍されている方でしょうか。
案外近くの知り合いかもしれませんが。


「あたりめ」のロッカー、喬二さんは顔を丸くして色を黒くしたら
みのもんたになると思うのですがどうでしょう。




さて、タッキーが食べてた
「オニオンスライスとかつおぶしのっけて しょうゆとゴマ油をかけ」たのを
食べてみようかな。
























  


Posted by あさ at 22:59Comments(2)

2009年09月06日

読書記録 (抄)

小説が多かったです。
読み終わった後で、私は小説は不向きだなぁと改めて思いました。

・「赤朽葉家の伝説」 桜庭一樹
 
 「『千里眼奥様』として家を支えた山人の祖母と母、娘である私までの
 旧家、赤朽葉一族の物語」というあらすじを読んで、手に取りましたが
 うーん。思っていたのとだいぶ違いました。特に第三章。
 主人公にそんなに自分を卑下しなくてもと言いたくなる。


・「私の男」 桜庭一樹
 
 上の作品で、少し消化不良だったので直木賞を受賞した同氏のこの本を
 読んでみました。…私に文学的素養がないというのもありますが、
 あまり気分のいい話ではありませんでしたし、この物語から汲み取れる
 ものがありませんでした。むしろ読んでちょっと後悔。


・「吉原手引草」 松井今朝子
 
 同じく直木賞受賞作。当時の吉原が目に浮かぶような骨太な作品。
 台詞回しの妙がたまらない。
 根を詰めて読むと、口調が移りそうでした。なにより上記二つより
 読後感がいいです。本懐を遂げた葛城がかっこいい。
 

・「喋々喃々」  小川糸
 
 東京は谷中でアンティークの着物店を営む主人公の生活、食べ物、
 細やかな歳時、実在するお店など、女性の好きなものばかりです。
 ただ骨子であるところの彼女の恋愛を読み飛ばせる技術が必要。
 …あの10歳の女の子はどうなったのだろう。めそめそ。
 あと彼氏(?)の描写の希薄さに、最後何かトリックがあるのかと
 緊張してました。


・「ぼくには数字が風景に見える」 ダニエル タミット

 サヴァン症候群の著者が語る、彼の見える世界。
 社会性を身につけるべく彼が歩む道の困難さが胸に苦しく、
 その一歩一歩の尊さに打たれます。
 

・「星守る犬」 村上たかし

 マンガ。犬というもののこの従順すぎる愛はなんなのか。
 おいおい泣いてしまいました。
 「ぱじ」といい村上たかしさんの、生活の中から底抜けの笑いと
 抗えない悲しみを掬い取るこの作風はサイバラ好きの方なら
 おすすめします。
 
 

  


Posted by あさ at 22:47Comments(2)

2009年08月23日

ムダヅモ無き改革2

2巻発売。入荷日即日購入。

今、「何でもかんでも蕎麦を打って解決するマンガ」を探しているのですが、
こちらは「何でもかんでも麻雀を打って解決するマンガ」です。

外交も宇宙からの侵略も麻雀で解決。
よく考えたら大変高度に成熟した世界ですね。
素晴らしい。

宇宙からの侵略者はWW2後、月に拠点を移した「第四帝国」です。
南米ではなかったようですよ。

静かの海には前線基地があり、そこにたなびくハーケンクロイツが
アポロ計画とソユーズ計画を終焉に導いたのです。

劇中でプーチン首相は(…が出るのですよ。それはそれはたいそうな美形で)
計画は一時中断して練り直しているだけと言っているのですが、
現実の首相は先日のニュースで世界一深い湖中の探索の視察後、
「次は宇宙か?」という記者に対して

「まだ地球でやるべきことが多くある」と応えていました。
地に足がついとるなぁ。



第四帝国からの使者、オットー=スコルツェニー大佐が
アダムスキー型宇宙船で(ここまでフィクションレベルを高くしないと
勘違いでプンプン怒る人がいるからだろうなぁ)
ヴァチカンに現われ、こう言います。

「5人だ 地球代表の5人の雀士を選べ」

地球代表の5人は、
テキサスの荒鷲、パパブッシュ。
灰色の枢機卿、ウラジーミル=プーチン。
最強ローマ教皇、ベネディクト16世。
ガスの魔女、ユリア=ティモシェンコ。

そして、前作において、
「この老いぼれの命一つで世界平和が買えるのなら安いもの!!」
と七孔噴血させながら戦った小泉ジュンイチロー、その人です。
マンガの中の政治家は皆頼りになるなぁ。

相手もワーグナーだったり双子狩りのメンゲルだったりと、えらいことになっている。

何をお描きになっても大仰に、それこそワーグナーを彷彿とさせる大和田御大ですが、
起家を決めるだけで創世記を持ち出します。

「はじめ神は雀卓を作られた」
「牌は混沌の中にあり、闇の中でただ時を待つだけであった」
「そして神はこう言われたのである」
「『光あれ!!(Fiar lux)』」

ここで全自動卓をバシーーーン!!

ヴァチカンには全自動卓があるのです。

「神の御心のままにサイは振られ、やがてすべてを告げるもの、起家が生まれた」
「第一日目の出来事である」

第六日目で教皇聖下は大三元で相手を吹っ飛ばします。
ちなみに大三元と書いて「サントリニテ」と読む。
もう死ぬほど笑いました。
なんという豪運なのかしら、聖下。
コンクラーヴェにおいても135人の枢機卿をハコ下にお下しになったそうです。

他にも
四槓子と書いて 「リングオブニーベルング」
七対子と書いて 「タンホイザー」
など、いちいち笑う。
うちにワーグナーのCDがないのが悔しい。

この中でもその圧倒的な強さを誇るのが、
プーチン首相がワーグナーに見舞った
九蓮宝燈と書いて「シべりアン エクスプレス」。

おヒキのメドベージェフ大統領が命懸けで切り開いた血路によって生まれ、
その様は
「ユーラシア大陸を貫く無限の鉄の車輪のような筒子の列」
と言ったのは、小泉チルドレンのゆかりさんの談。
勝手にBGMはストラビンスキーの「火の鳥」を脳内再生しました。

2巻で一番の漢は
「傀儡上等」と言い切ったメドベージェフ大統領でしょう。
プーチン首相を守ることはロシアの未来を守ることだと言ってましたもの。
倒れた後、小泉ジュンイチローに抱きかかえられる様も
ミケランジェロのピエタのように美しかった。

選挙間近のこの時期、麻生タロー総理大臣も出るこのマンガで
「私」を捨て戦う政治家に思いを巡らすのはいかがでしょうか。
ついでに笑えるしね!
(「公」と「私」について語りだすと大変長くなるので略。いやぁね。説教くさいおばちゃんで)



このようにはまったマンガを方々に宣伝する私ですが、かつて
「大漁!まちこ船」というマンガを知人5人に買わせたことがあります。
これは私に宣伝力があるという話ではなく、
面白がるものが似ている人間が近くに多くいるということです。
つくづく有り難いことだわ。

しかし今回は麻雀マンガ。さすがに素敵なマダムのお歴々(貴女のことですよ!!)に薦め辛いし、
「買ったわ!!」と言われると心苦しいなぁ。
近くに住んでたらご機嫌伺いかたがたお持ちするのに。もぅ。



追記。
「未曾有」にふり仮名がふってあっったのを見て、笑いました。
親切だ。











  


Posted by あさ at 22:16Comments(1)

2009年08月09日

何事もほどほどに

「閑隙に書を見ることは(略)生涯廃すべからず」


大分の賢人、廣瀬淡窓の言葉。

壮年の頃、目を痛め読書にも不自由した淡窓。

彼はまた書を読んで古今に通じれば、世の俗なことの弊害を脱して
家にいても、官途あってもそのなす事には必ず見るべきものがあると言います。



目の養生をしつつも、湯に浸かるようにたっぷりと言葉の世界に身を沈めたい。



低血糖で指が痺れてきた。
なんか食べなきゃ。

でも席を外してる隙に
♪ちかご~ろ~私たぁちは~ 

って「100歳万歳」がはじまりそうで立てない。
  


Posted by あさ at 04:20Comments(2)

2009年08月09日

夏・読書記録(抄)

いずれもアタイの別宅、地元書店にて購入。


・上坂冬子 著 「死ぬという大仕事」 読了
 
 遅ればせながらお香典代わりに購入。
 我々は至誠の筆を持つ人をまた見送った。
 彼女の作った道を汚さないことが最低限の勤め。


・半藤一利ムック本 読了
 
 昨年に続き、私の「半藤一利祭」は終わりを見せない。まだまだ盛り上がるぞ。
 隣に姜氏のムック本が置いてあった。おそらく漱石繋がり。
 

・田母神俊雄 著 「田母神流ブレない生き方」 読了

 この方が浪人になったときは、「こういう人を食いっぱぐれさせてはいけんな」と
 思い、本を買ったがまったくの杞憂に終わる。よかった。
 確かにブレがない。 しかし共著、対談の方が面白いのは何故なのか。


・山田芳裕 著 「へうげもの」9 読了

 ついに利休切腹。利休の羅刹の如き強さに笑い、仏の如き微笑に泣く。
 朝鮮の王子様、臨海君がキラキラしていた。あれは反則だ。


・高山栄 著 「京もキノコ!一期一会」 読了

 在野のキノコ博士、初のエッセイ本。
 キノコ好きの人の文章はどうしてこうも面白いのか。
 キノコの毒は言語中枢がどうかなるのだろうか。
 絵がきれい。


・さくら剛 著 「インドなんて二度と行くか!ボケ!!…でもまた行きたいかも」 読了

 腹筋崩壊。
 「三国志男」といい、この人の笑いへの欲とタフさに脱帽。
 こういう人こそかっこいいのよ。 引きこもりだけど。
 自分が男の子の親になったとき、ある程度覚悟しなきゃなと思った。


・石川雅之 著 「もやしもん」8 読了

 端から端までビールの話。 
 ビール!!おビール様を飲ませて!!
 京大、関大アメフト部以上の突破力を持つというおば様たちがかっこいい。
 ああいうタフなおばちゃんになりたい。


・水村美苗 著 「日本語が亡びるとき」 読了

 水村節に飢えて、この人が解説だけ書いた小説まで読む。
 期待が愉悦的読書体験を奪ったのかもしれない。
 ご自身の来歴故か、悲観に過ぎるのではと終始思う。
 「本格小説」に続く、小説を一日千秋の思いで待っています。
 


他、新書を4冊、悉くはずす。
嗅覚が鈍ったか、題名が巧妙になったのか。





   



  


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2009年08月08日

ぬかったわ

先々週だったか、日曜美術館に作家・高村薫さんが出ていました。


「新潮」連載の「太陽を曳く馬」の単行本化をこの番組で知りましたよ!
いつの間に?!

その日の内に本屋に行ったら平積みで置いてあるし。
何故気がつかなんだ、私よ。

「暑いのー、「照柿」の季節じゃのー、読み返しますかのー」

なんて思っていたらこの僥倖。
今年のお盆休みはこれね! 
なんて思っていたのに我慢がきかなくて今日買ってきてしまいました。
今こうしている間もソワソワする。
「晴子情歌」のような人間の心の深遠と、「李歐」のような読後感の爽快さを求めるのは贅沢かしら。
楽ちみ。


彼女の作品を読まれた方なら諾としてくれるでしょうが、
とかく真面目な方なのだろうなぁという印象を受けます。
ある時期から作品に散りばめられたキリスト教的なモチーフが
悉く仏教的なものに変わります。
これについて女史は
「阪神大震災によって、人の生死を分けたものはなんだったのか」
という問いを自分にし続けた結果と、何かで読んだ覚えがあります。
(「半眼訥々?」違うか)

TVの中でもその思索の深さと誠実さは充分に伝わるものでした。
今までで一番姜氏と話したゲストじゃないかしら。
活字にして欲しい対談でした。



少し驚いたのが、高村女史のド金髪。
これに驚いたというより、人の髪色に釘付けになる自分に驚きました。
何年か前の橋本崇載七段以来です。

紳士じゃなくても金髪がお好き。



もうひとつぬかったのが、「OUTLIERS」が既に邦訳されていたことです。
しかも訳者が勝間和代さん。
ぜんっぜん気がつかなかった。

これはもう先日読んだのですが、マルコム・グラッドウェルはやっぱり面白かったです。



マタイの法則と彼が呼ぶ、チャンスを与えられた人は己のスキルを伸ばし
それがさらなるチャンスを呼び込むことにつなげる法則、

また成功した人物の多くは、成功した領域で1万時間を超える経験を積んでいるという1万時間ルール、

さらにチャンスとそれをつかみ取る能力、

ある程度社会的・文化的背景がサクセスの要因となるが、それを認識することで克服できることなど。

ビートルズなどたくさんの具体例が面白いです。
自己啓発本というより、ノンフィクションとして読みました。

ただこれ、訳は勝間和代さんじゃなくてもいいんじゃないかなぁと。
売るためだけなら、もう彼女の推薦の帯だけでも充分でしょ?
訳がよろしくないとかいう話ではなくて、仕事や富の分配の話としてお聞き下さいませ。

あと装丁は原著の方がかっこよかった。


しかし気にしてたこの2冊の情報を逃すなんて。
アタイも焼きが回ったもんだよ。



橋本七段…NHK日曜AM10:00「将棋の時間」の講師としてもご活躍。
       口癖は「マジやべぇ」
       かつてド金髪のパンチパーマ、紫のスーツで視聴者の度肝を抜く。
       先々週は浮き輪を持って登場。 なぜだ。
       ファッション・言動ともに釘付けにさせる、なんともこ憎い女殺し(油地獄)。
  


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2009年06月28日

とろける鉄工所

野村宗弘著 「とろける鉄工所」 読了。

マンガです。

広島県の小さな鉄工所を舞台に、溶接工たちの笑ったりほろりとしたり命を賭けたりする物語です。
ほとんど溶接豆知識のマンガなのですが、これが油断しているとじわりと胸を突くのです。

働くということ、
苦労するということ、
人に優しくするということ、

こういう人生の根幹をなすような命題が、一話4ページのギャグマンガの中に挟み込まれています。
上記のようなことは大仰ではなく、日常の中にこそあるものなんですよね。

登場人物は皆どこかで苦労していて、それでもそれを表に出さずに人に優しいのです。

「まぁ、そりゃ当たり前のことだし」

くらいのスタンスなのです。
何かと小理屈を考える我が身の反省にもなる。
そういえば「かもめ食堂」もそうですね。

やはり世界は美しいもので出来ている。





と、この辺でモードを変えて。
(ここからは読んだことがある人向けに)

あー、ぶちおもろいで「とろ鉄」!!
広島弁が伝染るわ!
「溶け込め!! わしのビード!!」 (溶接技術競技会において)
「シミーズ!!これシミーズ!!」 (ウエスを持って)
「鉄が飛ぶわけなかろうが・・・」 (社員旅行の飛行機内で)
「今井の背中の神様聴いとるかー!!」(背中に不動明王を背負ってる同僚に向かって)
「小島理論」(後述)



「でもね、ボロボロ作業着って なかなかカッコええと思うん」(洗濯取り込み後だんなの作業着を着て)



自転車選びの回の北さんのとまどい。
1巻の台詞なしのおまけマンガの奥さんの顔。
2巻最終話のさと子ちゃんの目の下の線。

深夜食堂に続き、当たりを引きました。




小島理論…怪我をしたとき瞬間接着剤で傷口を塞ぐ。激痛が走ることにより脳から
       「至急治せ」という信号が送られ、傷の治りが早くなるというもの。
       真似したらならん。
       が、私も割とこういう自分の体を信じる方向で病気・怪我と向き合います。
       よって医薬品は長さ10×幅7×奥行き3のポーチ一個のみ。
       こうやって常に追い込んでおくのも病気・怪我を遠ざけると思っています。
       まぁ倒れたときが死ぬときだ。(なんだこの女やくざは)       

  


Posted by あさ at 00:22Comments(4)

2009年06月14日

宴のあと

あー。


よかったのかなー。


短慮だったんじゃないのかなー。


私、七尾氏のお優しさに甘えてる?



でも今回楔を打った制約のある文章を書いたことで、自分の癖がわかりました。
いぇーい。

↑あさちゃん、自分のことばっかりやな!



さて。ちと徘徊して、明日の朝市に備えるかの。
すり身買って、おじいさんの口に放り込むんだー。
で、おじいさんの耳に耳掻き突っ込むんだー。
えへへー。



私が食べ物ばっかりあちこち持ってく理由。
後に残る物をあげるより、素敵なことだから。
自分の用意したものが、好きな人たちの血となり肉となるの。
それはとても素敵なことでしょう?




七尾さん、
大分に取材で来ることがございましたら教えてくださいましね。
肥え太るまで口の中に放り込みますわ!

そして私に新作を読ませて。
良書であるほど、読んだ後の募る寂寥感は私が欲深い証拠です。







  


Posted by あさ at 01:39Comments(15)

2009年06月14日

炭鉱太郎がきた道

七尾和晃氏著 「炭鉱太郎が来た道」 読了

まずは己の運の良さを讃えたい。
「銀座の怪人」を最初に読んで、「炭鉱太郎が来た道」で締めることが出来たこの天佑。
私は酒の神と本の神には間違いなく愛されています。
(夜通し飲むときは「神の雫」よろしく、「目覚めよ、私の中のバッカス!!」て言ってから飲みます。ばかですね)

日本の近代を支えた炭鉱夫(炭鉱太郎)たち。
彼らはどこからやってきて、どこへ消えたのか。
何者でもなかった無名の人々の、確かにあった人生を辿るルポタージュです。

始まりは炭鉱離職者に交付された「黒い手帳」の軌跡追うものです。
石炭から石油へ移行していった日本のエネルギー産業を地の底から支え、
やがて去っていた男達はかつて何を思い、今何を思うのか。

「誰でも人生で一冊は小説が書ける」
なんて言葉がありますが、有名、無名を問わず人はドラマチックで悲哀と喜びに満ち満ちた人生があります。
その人生を敬い、筆に墨をし白けき紙を埋めることのなんと尊いことでしょう。


「人間に乗って文化は育まれ、そして移っていくという、当たり前のことを(略)」
著者ご本人から頂戴した言葉です。(ありがたいことですね)
これが氏のご本の根底にあるテーマであることは、その筆力の確かさから如実に伝わります。

氏はこのテーマを産業、政治、経済、民俗学他その底なしの知識と行動力を持って表現されてますが、
どちらかというと、よりフォークロア寄りの興味が尽きない私としては、
第3章「逆光のなかの『山の神』 第4章「ヤマに消えたキリスト」 第5章「忘れられた西の果て」で
頭に血が集まってしまいました。

どうも「漂泊の民」「山人」「道々のもの」「安曇」「たたらもの」「サンカ」他、
「通り過ぎる人」に憧れともつかないような思いがあります。

ところがここで「万世一系に纏ろわぬ者」というキーワードが入る本は
途端にその人の営みの描写の精彩を欠き、カロリー豊富とは言い難い(てへ)物が多いのです。
いや、もちろん万書に通じるわけでもないので
たまたまハズレを引いてきただけかもしれませんが。

やはり学問とイデオロギーは別掲にしてしかるべきではないかなぁと思います。
一緒くたは人を傷つけることが多いよ。


それでいくと宮本常一の誠実なフィールドワークを基とする著作は
優れた学術書であり、読む者の善なる心を喚起させる文学的作品でもあります。
洋の東西を問わないならば、レヴィ・ストロースも同様といえるでしょう。
「宮本常一とレヴィ・ストロースが一緒って、お前どんな読み方してんだ」
と言われそうですが。
良書であることと、テーマの派手、地味は関係ないわ。

そして平成の御世、この系譜は七尾氏に継がれていると信じております。
きっときっと、さらなる大著を著され、「炭鉱太郎」引用されていた「忘れたれた日本人」
「塩の道」「悲しき熱帯」「野性の思考(三色スミレ)」と共に称されるのです。

ふふふ。さらに追い詰めてみました♪
どうかどうか筆を折らないでくださいましね。
エピローグ最後の2行は、私の数年後の「自分史上最高の読書体験」を約束してくださる
お言葉として拝読いたしました。
「銀座の怪人」2つめのコメントで不穏なことお書きになるんですもの。

さらなるご活躍をお祈りしつつ、「炭鉱太郎」をはじめ(入手可能な限りの)著作5冊を
世に出してくださいましたことへの感謝をここに申し上げたいと思います。


ありがとうございました。

  


Posted by あさ at 01:22Comments(3)

2009年06月14日

闇市の帝王

七尾和晃氏著 「闇市の帝王ー王長徳と封印された「戦後」-」 読了

ー戦勝国民としての特権を武器にした男は、異郷の地日本で
「東京租界の帝王」と呼ばれるまでにのし上がっていくー

ー彼は何を目指したのか、日本は彼をどのように受け入れたのか、
遠き「戦後」の知られざるアンダーワールドを跋扈した男の
回想を交えた物語ー



物語は安倍晋三が自民党幹事長に就任した秋(!)、
著者が居酒屋の席で見た総理大臣宛ての内容証明郵便と
ある男の名刺を見たことから始まります。
「黄色合同株式会社 代表取締役 王長徳」

彼がいかに「封印された」戦後を体現した人間か。
この本にも出てきますが、「M資金」「五島慶太」「G2」「安藤昇」他
少し本を読めばいくらでも出てきます。
私が寡聞にして知らないだけだったのかもしれませんが、
当の「王長徳」の名前をここで始めて知りました。


彼の元を訪れた著者は、一人の男が背負った「戦後」に耳を傾けます。
語られざる物語は、決して断絶した遠い昔ではなく、平成の今に繋がるものでした。

彼の言葉、彼の人となりの全てが書かれた本ではありません。
闇市を作り、戦後の混乱期に暗躍した彼は決して清らかな人生を送ったわけではなく、
著者自身どこまで活字にするか悩まれたことと思います。
ですが、清濁併せ持ってこそ人間。
だからこそ著者は彼に惹かれたのでしょう。
それは我々読者も、著者の筆をかすがいに追体験できます。


最新作、「炭鉱太郎が来た道」の道程を示す著作の一つです。
新たな読書体験の予感は、単調な生活の中で最高の愉悦ですね。









ちょっと息切れ。
4冊一気はやっぱり時間がかかるのかしら。
ちゅーか「朗読者」読みながらってのを止めろ。


  


Posted by あさ at 00:50Comments(3)

2009年06月13日

堤義明 闇の帝国

七尾和晃氏著 「堤義明 闇の帝国」読了

副題は「西部グループの総帥はいかにして失墜したか」
どぎついほどのキャッチーな副題ですが、
プロローグから興奮させられます。

2004年10月、堤義明コクド会長の辞任会見を著者は
生涯忘れることが出来ないものと語っています。

我田引水になるかもしれないと、謙虚な前置きをされていますが、
約2年の著者自身の取材が堤氏の辞任と
西武鉄道による「借名株」の発表の突破口となったとあります。
4ページ目からこんなん書かれたら、そら夜通し一気読みするわ!!
翌日の肌のコンディション?そんなん知るか!!


取材を始められた当時、著者は「週刊新潮」の専属記者でした。
しかしコクド広報室からの圧力により、
利益供与事件も借名株も「週刊新潮」では記事に出来なかったのです。

しかしご自身の信念を貫くことを旨とし、「週刊新潮」を離れフリーとなられます。
見ろ!この骨太な快男子振り!
私が女だったら惚れてましたよ!!
(実は私は女の着ぐるみを来たおっさんです。背中に秘密のチャックがあるのよ。45分でも探すのは無理)

本陣のコクドはもとより、堤家のルーツとなる滋賀の村を訪ね、
かつて西部グループの大番頭といわれた方のお家を訪ね・・・。
著者のこの執念はどこから来るのか。

それこそがどぎつい事件物でありながら、それだけで終わらない
「人間を書く」のを本領とする著者の原動力となったのです。

堤家はもとより、彼らに辛酸を嘗めさせられた市井の人達も丁寧にその人生を追って行きます。
エスタブリッシュメントの舞台裏、日本の不透明な金回りを牛耳っている
仕組みを求めて読むというより、その後の著作に続く
「哀歓に満ち満ちた人の営みへの眼差し」をより深く感じられる一冊でした。


ちょっと面倒な単語が多いので、読むのに時間がかかりました。
あとちょうどこれと平行して「マッチョテイスト」を読んでいたので、理解力は低下する一方。
併読が基本の私の読書スタイルですが、
うなぎと梅を一緒に食べたらこんな感じなのねと思いました。






「マッチョテイスト」…小池一夫原作の奇書。マッチョな問題はマッチョに解決(だめじゃん)する
            灯ちゃんとその仲間の青春物語。
            「私はマッチョな女、マッチョガールさ!!」
            「マッチョだったらダチッコ(友達の意)さ!!」
            「キャンセルしますって言いな!愛はキャンセルしますって!!」
            など名言多数。本当に最初から最後まで灯ちゃんが何を言っているのか
            まるでわからなかった。 


  


Posted by あさ at 23:27Comments(4)

2009年06月13日

あたー。

祭中にちょっと息継ぎを。
ぷはー。

内容を極力書かずに魅力を伝え、
かつ飽きられないようにバカ話を織り交ぜつつ
(珍しく人に読んでもらうことを第一義としている記事だから)
そのバカ話さえも、本と氏に繋がるように書く。

あたー。結構大変だわ。

力量不足って?
まぁな!!

でもアタイがんばゆ!(BYらぶやん)←こんなのばっかり読んでるわけでは…。いや読んでます。

  


Posted by あさ at 22:14Comments(2)

2009年06月13日

総理の乳母

七尾和晃氏著 「総理の乳母ー安倍晋三の隠された原風景」 読了

山口の小さな村で出会った一人の老女。
彼女は当時政治記者達から岩戸に隠されたかのように、その姿を晦ましました。
彼女はなぜ「行方不明」とされていたのか・・・。
すべては著者が彼女と出会った2003年9月、
49歳の若さで自民党幹事長となった男の存在にありました。

ー彼女の名は久保ウメ。安倍晋三の乳母だった女性(ひと)-


安倍晋三が最初に世間の耳目を集めたのは、やはり小泉元首相の電撃的な訪朝の際の発言、
「もし拉致を認めないで謝罪をしないなら、席を立って帰りましょう」
その後安倍晋三のタカ派のイメージは定着しましたね。
この発言に対する著者の違和感、恐怖感は当時ニュースを見ていた私も感じていたのを思い出しました。

あれから7年。
かわったことは首相の首。
かわらなかったのは拉致問題の抜本的解決が見られない後手後手の外交。
我々は何をしてきたのでしょうか。

挙句今日のニュースのトップは、北朝鮮のウラン濃縮着手の表明。
さらにすべてのプルトニウムの兵器化を言明。(いや、これはさすがに脅しという名の外交カードでしょうが)
・・・いけね、泣けてきた。


「総理の乳母」では安倍家を軸として、戦後からこれまでの政治の季節を縦糸に、
80余年を生きたウメとの遣り取りと彼女の人生を横糸として、246ページを織り上げています。
さらに(・・・ごめんなさい。先に謝ったら許してくださる?)
その織布に錦糸で綾なしたかのような、著者のリリカルなまでの感性!出ましたよ!
詩人?乙女?どうしたの?!
怜悧なまでの聡明さが伺えるからこそ、余計に目立つこの危うげな程の弱さと若さの露呈。
そんなに弱さを見せなくても、私を始めみんなあなたのことが好きだから!!大丈夫だから!!

たぶんコメントを頂いていなくてもこれは書いていました。それくらい気になるのです。
いらん世話ですが。
芸人でいうとチュートリアルの福ちゃんも同じくらい心配です。
やはりいらん世話ですが。


この剃刀陸奥もかくやというような明晰ぶりと、叙情的に過ぎるほどの精神のかよわさ。
軸足をどこに置いて読んだらいいのか分らないこの感じはアレです。
「カンゴロンゴ」ですね。
NHKの日曜の夜、今のサラリーマンNEOと同じ時間にあったものです。
この番組のギャグとシリアスの匙加減の狂いっぷりは相当なものでした。
心配しながら見ておりましたが、後半になってようやくわざとだというのがわかりました。

ということは氏の危うさもわざとの可能性もあり?!
もしかしてやられた?!
文学的作為ってやつ?!
私の中にようやく気づきが走ったのです。
これが書き物の天賦の才があるということでしょう。
このあたりは頂戴したコメントに書いてらっしゃいましたが、おそらく大いなる謙遜。
著者の力量の底知れなさを思うに到る読書の時間でした。


追記・・・本、雑誌を手に取ると、出版社と表紙の紙質を確認してしまう下品な癖があります。
     出版に際し、ご苦労なさったのですね・・・。


カンゴロンゴ・・・不評だったかあっさり終了。平幹次郎演じるカンゴローは見た目のわりに
          打たれ弱い方で、なかなかに母性本能をくすぐる恐ろしい御仁。
          「お言葉発射!」の際の図画工作はピタゴラスイッチのスタッフによるものか?
          「♪30過ぎても寝てばかりぃ 40になっても惑いっぱなしぃ」というOPは
          今でも口を伝ってしまいます。

  


Posted by あさ at 22:04Comments(2)

2009年06月13日

七尾祭開幕

フッフフ。
なんやかんやでやって参りました、七尾祭。
勝手に盛り上がっております。
一人遊びは大得意よ。



まずはことの経緯を。

偶然手に取った七尾和晃氏著 「銀座の怪人」。
その質的ボリュームに圧倒され、拙文の披露の恥も厭わずこちらにつらつらと感想を書きました。

数日後、まさかの七尾氏のご訪問、
さらに読み手にとっては僥倖とも言えるような作者の生のお言葉を頂戴したのです。




もうね、祭ですよ!!
祭せにゃならんですよ!!
義とか愛とかNHKの中の人が今ゆうてるじゃないですか!!
美丈夫ばかりに任せちゃおられん!
ワシにも言わせろ!!
義だ!愛だ!



途中、友人から借りた「湯けむりスナイパー」や「マッチョテイスト」を読んで、
おがくずしか入っていない私の頭がさらにスッカスカになってしまいました。
氏のご本の魅力を十二分に紹介するのは大変困難ですが、
それはご本を読めばわかることです。私はただ題名をおしらせするだけでもこと足りるでしょう。
だって「銀座の怪人」で頂戴したコメントだけでも、氏のお人柄、その才は読み取れるのですから。

こちらで駄文を書いたところで、義を返したことにはならないのは承知の上。
ですが何かしたいと思わずにいられないこの気持ちをお許しくださいましね。


それでは一気呵成に4冊いってみまショー!!  


Posted by あさ at 21:21Comments(2)

2009年06月07日

祭予告

私の名はあさ。
昼は右利き、夜は左利き。
そして


義には義で返す女。








そんなわけで

「わっしょい七尾和晃氏祭」

を勝手に催したいと思います。  
御本の感想を書かせていただくだけですけどね。
返ってご迷惑にならないかしらと内心ビクビクしつつ。

「花の慶二」を再読して、「幸村、貴方どんだけ長渕剛?」とか言ってる場合ではありません。

今夜は楽しみにしていた
「炭鉱太郎がきた道」
です。



いい夜になります。
というわけで今週は早めに失礼。




義には義で返す…人に話したら、「男で出来た傷は男で癒す、みたいな?」と言われた。
           
           違うよ。
  


Posted by あさ at 01:15Comments(5)

2009年06月06日

乱読

テレビにもよく出る某学者の某書を読んでぐったりする。
この極楽とんぼのあさちゃんが、憂国に胸が潰されそうになるくらいぐっったり。


いかん。
自分の精神衛生は自分で向上させねば。
オラに元気を分けてくれ!!


というわけで、
植松 黎 著 「毒草を食べてみた」
桜井章一 著 「人を見抜く技術」
氏家幹人 著 「江戸の性風俗 笑いと情死のエロス」
水木しげる御大 著 「本日の水木さん」

読了。




「毒草~」…身近な草花が実は結構な毒草であることが多いのですね。
       毒草毎に項立てているので読みやすいです。
       題名ほど著者は召し上がっていません。
       そりゃ毒草だしな。


「人を~」…20年無敗、「雀鬼」の二つ名を持つ著者ならではの説得力。
       半ちくなビジネス書では足元にも及びません。
       ダークな世界で生きた人だからこそなのか、
       逆にブレのない、己に対する潔癖さがある方です。


「江戸の~」…春画にビビる。



「本日の~」…御大の言葉は深い。
         御大の一人称は「水木さん」
         
         「当時のヒットラーさんは格好が良かったね(中略)
         人間あまり無理をしちゃあいかんですね。」
         「水木プロには、水木さんを心配してくれる美女がいるんです。
          しかし美女といっても、触っていいわけではないのです」
         名言多数。
         御大の中身は「32%は水木さん、あとの68%は神様」
         らしいので、私は篤く敬います。        
         ところで次回のNHKの朝の連ドラが「ゲゲゲの女房」というのは本当でしょうか。
         


楽しかったです。
私の精神衛生は保たれました。
やれやれです。




  


Posted by あさ at 23:59Comments(2)